特集 技術開発物語 Vol.1
カタツムリの防汚メカニズムに学ぶ


乾燥に弱いため、ジメジメした場所を好むカタツムリ。雨の日には活発に活動しています。
乾燥に弱いため、ジメジメした場所を好むカタツムリ。
雨の日には活発に活動しています。
「どうしてカタツムリはいつもきれいなんだろう?」
ある雨の日のこと。研究室で窓の外を見ながら、スタッフがつぶやきました。
「カタツムリってきれい好きなのかな。汚れた殻のカタツムリを見たことがない……」
そう言われてみれば、ジメジメした場所にいますが、殻の表面はいつもきれいです。動きは遅いし、手もないのにどうしてなんだろう?カタツムリ自身がなんらかの方法で殻を掃除するのか?おもしろい!
研究室ではカタツムリの謎に迫ることになりました。



カタツムリの殻には油が付着しない!?
カタツムリは巻貝の仲間で、約6億年前に祖先が誕生しました。その殻は大理石と同じ成分のアラゴナイトとタンパク質の複合材です。殻の表面層はタンパク質でできているため、本来なら水より油になじみやすく、汚れやすい性質をもっているといえます。
なのに、なぜカタツムリの殻には汚れがつかないのか?

そこで、実際にカタツムリの殻に油が付着するかどうか実験。殻に油滴をたらしてみると、見事にはじかれてしまったのです。
カタツムリの殻の主成分は炭酸カルシウム。炭酸カルシウム鉱物である方解石と、カタツムリの殻の汚れやすさを比較実験したところ、方解石には油が付着するが、カタツムリの殻には付着しないことが判明しました。
カタツムリの殻の主成分は炭酸カルシウム。炭酸カルシウム鉱物である方解石と、カタツムリの殻の汚れやすさを比較実験したところ、方解石には油が付着するが、カタツムリの殻には付着しないことが判明しました。



カタツムリの殻を電子顕微鏡で見ると、規則正しい溝がつくられていることがわかります。 カタツムリの殻を電子顕微鏡で見ると、規則正しい溝がつくられていることがわかります。

カタツムリの殻の汚れ防止機構。殻表面の細かい溝によって水膜ができ、油を寄せつけない。 カタツムリの殻の汚れ防止機構。
殻表面の細かい溝によって水膜ができ、油を寄せつけない。
雨が降れば汚れが落ちる秘密は細かい『溝』にあった!
「秘密はやっぱり殻にある!」
研究者の血が騒ぐのは、こういうときです。早速、カタツムリの殻の秘密を探ることに夢中になりました。

殻の表面構造を解析すると、数百ナノ(1ナノ=10億分の1m)からミリサイズまでの広範囲な階層でフラクタル組織、つまり『溝』がつくられていることがわかりました。

とてつもなく細かい溝。これがカタツムリの汚れ防止機構でした。つまり、殻表面にあるこの溝に常に水がたまっている状態なのです。ここに油をたらしても、水と油は反発し合うのでくっつかない。だから、上から水をかけるだけで、浮いている油が流れ落ちてしまうというわけです。



「外壁材の表面に水の膜をつくればいいんだ!」「でも、どうやって?」
なるほど、だからカタツムリの殻は雨が降れば汚れが簡単に落ちるわけです。

では、この防汚メカニズムを外壁材に取り入れることはできないか? ここから「汚れるのが当たり前」と思われている外壁材の常識をくつがえすべく、われわれ研究室と商品開発室との共同作業が始まりました。

表面に水の膜をつくる、とひと言でいっても、それはまさにミクロの世界ならぬ、ナノの世界で実現せねばならないこと。実際に人が触れて『濡れている』と感じるようでは日常の使用に差し障りがあるのは当然です。

空気中の水分を吸着して、表面に人間には感じられない程度の薄い水分子膜を形成させたい。そのために様々な可能性を探っていく中で、シリカ成分を外壁材の表面に塗ることを思いつきました。乾燥材「シリカゲル」の原料にもなっているシリカ成分は、空気中の水分と強く結びつき、保持することができるからです。
空気中の水分を吸着して水の膜をつくります 空気中の水分を吸着して水の膜をつくります。
ホコリや排気ガスの汚れは水の膜の表面に付着します。 ホコリや排気ガスの汚れは水の膜の表面に付着します。
雨が汚れを流し落とします。 雨が汚れを流し落とします。



防汚実験を繰り返すこと数百回。ついに「ナノ親水」基準の防汚技術が完成
「マイクロガード」加工の外壁「SUITEWALL」。季節や昼夜を問わず、防汚効果を発揮します。
外壁システム商品「SUITEWALL」は、優れた親水性を持つタイルと、マイクロガード加工で親水性を持たせたヌリートで構成され、季節や昼夜を問わず、防汚効果を発揮します。
しかし、理論を説くのは易く、形づくるのは難し。
「強度が足りないので外壁に適さない」「厚すぎて住宅には使えない」研究室と商品開発室が一丸となり、どれだけ試行錯誤したことでしょう。

試作品をつくっては、実際に汚れ物質を付着させ、雨が降ったと想定して散水する実験が果てしなく繰り返されました。
ブラシでこすらなくても『雨が降ったら汚れが落ちる』カタツムリを目指して。

実に防汚実験を繰り返すこと数百回。ついにINAXならではの「ナノ親水」基準の防汚技術が完成したのは、着想から数年後のことでした。

ナノ親水
「ナノ親水」の外壁材の表面は、常にナノサイズ
(1ナノ=10億分の1m)の水膜を形成しています。


住宅外壁新システム SUITEWALLに関する情報はこちら
商品基本情報(住宅外壁)
専用サイト(SUITEWALL)

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